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【文部科学省「特色ある大学教育支援プログラム事例集」345〜351頁より・一部修正】

■取組の特性

本学の取組の特性は、多文化地域に関する知識や共生に関する概念と専門職としての基礎知識・技能を、対象地域でのフィールドワークと地域課題の抽出から課題解決までのプロセスに参与させることで、専門的職業人として地域課題を解決する知識・技能・心構えを育てることにある。 その実現を下記に示すような、「地域協働ネットワーク」を活用した全学的・総合的教育カリキュラムを推進することによって実現する。
その教育の特徴は、「地域課題の抽出から施策提言・実践まで」を遂行できる職業人を育てるところにある。そこで、第1に「課題抽出力」、すなわち、フィールド調査を行い、外国人集住地域の実態を構造的に把握し抽出する力を育てる。 第2に、「課題解決力」、すなわち、課題解決に必要な分野・領域の機関・人材をコーディネートし、協働で課題解決を図る力を育てる。その上で、「提言実践力」、すなわち多文化共生社会の構築に求められる対応策を専門領域から具体的に検討し実践する力を育てる(図2)。

3つの力
図2 養成する3つの力

そこで、学生には、次に挙げる3つの段階の教育プログラムを提供する。第1は、外国人集住地域の実態を構造的に把握し、課題を抽出する力を養成するプログラム(多文化地域に関する基礎講座)、第2は、外国人集住地域の地域課題を、関係機関・個人と協働で解決する力を養成するプログラム (協働型課題解決プロジェクト演習)、第3は、多文化地域の構築に求められる対応策を専門領域から具体的に検討し実践する力を養成するプログラム(多文化地域でのインターンシップから施策立案へ)である。
これらの教育プログラムは多文化地域の実情を理解し、課題抽出から課題解決までのプロセスを実践的に学ぶ場が前提となる。そこで、本学では「地域協働ネットワーク」を活用する。「地域協働ネットワーク」とは、群馬大学・群馬県「多文化共生教育・研究プロジェクト」により構築された多文化共生を推進する人的・組織的ネットワークである。本取組では、その拠点となる組織は、3つある。群馬大学・大泉町「多文化共生教育・研究プロジェクト推進室(大泉分室)」、大泉町「多文化共生コミュニティーセンター」、群馬県新政策課「多文化共生支援室」である。 これらの機関は、地域課題の収集から施策提言までの機能を担っており、有機的に連携する。学生は、これらの3つの拠点を活用しながら、課題の抽出から解決までのプロセスを実践的・体験的に学習する(図3)。


図3地域協働ネットワークの活用
上述した3つのプログラムがこれらの拠点をどのように活用して展開するのかを以下に説明する(図4)

(1)第1プログラム:多文化地域に関する基礎講座

外国人集住地域が群馬県を含む日本各地に生まれた背景、地域住民の実態、関係機関の対応、発生している課題などの理解をはかる。教養教育でその基礎を学ぶと同時に、群馬大学・大泉町「多文化共生教育・研究プロジェクト推進室(大泉分室)」を拠点としたタウンミーティングや実態調査を行い、学生が、外国人集住地域の実態を構造的に把握し、課題を抽出する力を養成する。多文化地域の教育等に関わる講座は、主として教育学部が開講し、他学部の学生も履修可能な開放科目とする。

(2)第2プログラム:協働型課題解決プロジェクト講座

綿密なフィールド調査とアンケート調査により課題の抽出と課題の構造的理解をした上で、地域住民(日本籍・外国籍住民)・行政関係者・課題に関係ある機関の担当者・大学教員が協働で推進するプロジェクトに学生が参画する。 大泉町「多文化共生コミュニティーセンター」を拠点にして、プロジェクトの企画・立案・実施・評価を行う。一連の活動には、学生も主体的なメンバーとして参画する。「在住外国人のための進路ガイドブック」の作成、「外国人学校健診結果説明会」での健康啓発ワークショップ、 「防犯ワークショップ」の開催など、学生たちが中心となって推進したプロジェクトも少なくない。学生が自らの興味関心と専門性を発揮して、課題を構造的に理解しながら抽出し、課題解決のためのネットワークを形成しながらプロジェクトを企画・実施し、その成果に基づき施策提言をするという一連の活動に積極的に関わる機会を提供する。 なお、これまで課外活動としてこれらのプロジェクトを推進してきた社会情報学部と工学部についても、随時、正課に位置づける予定である。

(3)第3プログラム:多文化地域でのインターンシップから施策立案へ

このプログラムでは、外国籍住民と日本籍住民が場を共有する機会がある職場で就業体験をする。さらに、協働型課題解決プロジェクトが就業体験を通してどのような実効性を持つものか客観的評価をし、課題解決のための施策を検討する。 上述した第1・第2プログラムのそれぞれ2講座以上を履修した学生が対象となる。このプログラムでは、専門領域での就業体験を通して、より専門的技能を高めるとともに、異なる専門領域での就業体験も可能とする。 協働型課題解決プロジェクトへの参画とインターンシップの体験を基に、地域課題を解決する施策の立案をする。群馬県新政策課「多文化共生支援室」や大泉町広報国際課・教育委員会が実施する施策検討会等に参加し、外国人施策立案の実際とその意義・効果について学習する。